インターナショナル考古学トレーニング・スクールが開かれる

ズボリャノヴォは文明の十字路

インターナショナル考古学トレーニング・スクールが開かれる『ズボリャノヴォ』は、北東ブルガリア、ルセから100キロほどのところにあり、東西2.5キロ　南北3キロの広大な地です。この地域が天文学、占星術と関係が深かったことは、星座のように配置された現存の100基余の古墳が語っています。

ブルガリアの先住民族トラキア人・ゲタイ族の聖地であったズボリャノヴォは、1982年に、マケドニア式石室墓「スヴェシュタリ古墳」が発見されたことで一躍有名になりました。（1985年ユネスコ世界遺産登録）

校長ディアナ・ゲルゴヴァ教授の指導の下に実習する発掘現場は、紀元前3世紀頃の地層遺跡、トラキア・ゲタイ族時代で、日本の弥生時代にあたります。ズボリャノヴォの地名は、「集まるところ」を意味する語に由来しますが、この地の特質をよく表しています。トラキア平原を見晴らす石灰岩の台地からドナウ川や黒海への道が結ばれ、様々な文化が運ばれてきました。先史時代から石器時代、鉄器時代、トラキア、古代ギリシャ・ローマ、中世にいたる長い文化の足跡を、遺跡や出土品に見ることができます。またイスラム教アレヴィの一徒の文化を今日まで共存させるという独特な地域性を育んでいます。

近年益々盛んとなったブルガリアの考古学発掘調査による成果、特に黄金製の精巧な遺品をはじめ、黒海における海洋考古学調査の結果などは、10年後、20年後には、世界の歴史を塗り替えるような可能性を秘めていると期待されています。

インターナショナル孝古学トレーニング・スクールの校長・Dr.ディアナ・ゲルゴヴァは、ブルガリアの考古学者であるだけでなく、比較文化史という広い観点からも精力的に研究を続けている国際的な歴史、考古学者であると認められております。

日本から、世界からのご参加を心からお待ち申し上げます。

◆2010年9月にNHK衛星放送テレビ番組で、ブルガリアの考古学の現状が放映されましたが、このゲルゴヴァ教授の発掘現場も紹介されました。
◆ズボリャノヴォの考古学研究の歴史と成果についての「ポスター展」が, 2011年1月から2012年3月まで、東京・古代オリエント博物館、東海大学、岡山・オリエント美術館、東京・渋谷区文化センターを会場に巡回展示されました。


インターナショナル考古学トレーニング・スクール

サマースクール開催地の歴史と地理的環境

開催地・発掘サイトのあるズボリャノヴォとスベシュタリ村の地理から始めましょう。

ブルガリアとルーマニアの国境をなして流れるドナウ川の国境の街（州都） ルセ（北緯43度50分/東経27度57分)から、南東に100キロほどのところに国立保護地区に指定されたズボリャノヴォという地名があります。

ズボリャノボ『集まる所』という意味をもつ言葉に由来する地名が示すように、黒海にも近い水陸の地の利によって文明の十字路となり、宗教と文化が集まり、留まり、通過していったのです。

ズボリャノヴォの南の入り口にあたるスベシュタリ（蝋燭）村の地名の由来は、ロウソク（蝋燭）職人が暮らしていたことからだそうで、地名そのものが、信仰との深い関わりを示しています。

　考古学トレーニングスクールが開催されるのは、 このズボリャノヴォとスベシュタリ村の広大な地域にある古墳の発掘現場です。紀元前400年前後の地層で、時代的には、日本の弥生時代に相当します。

　ブルガリア国家形成前史に当るトラキア民族の時代ですが、北方トラキア民族系・ゲタイ族の聖地でした。ゲタイ族は、霊魂不滅という死生観をもち、天空の星座と同じ配置で墓を築きました。現存する古墳の数は、実に100基を数えるという壮観なものです。

　古墳の中には、1985年ユネスコ世界遺産に登録されたスヴェシュタリ古墳（内部壁面を10体の女人像柱で飾っている）があります。

　昨年2012年、その30周年を祝った年、別の古墳（第一回考古学トレーニング　サマースクールの発掘現場）から、2400年前の夥しい黄金製品が出土して大ニュースとなり、喜びに沸きました。



出土した2400年前の黄金の首輪

The Golden gifts from Sveshtari tumulus in the capital of the Getae in Sboryanovo in NE Bulgaria

The continuation of the excavations of the highest tumulus of the necropolis of the Getic religious and political capital Dausdava/Helis, in the Sboryanovo National reserve (NE Bulgaria), after a break of 8 years, lead to an unexpected discovery on 7th of November 2012 of a wooden box with golden objects.


出土品を手に喜びのゲルゴヴァ教授

The tumulus belongs to the Eastern, royal Hellenistic necropolis of the Getic center. In 1982 in its Northern part was discovered the Sveshtari tomb with caryatids(on the UNESCO list). The Great Sveshtari tumulus is situated in the Southern part of the same necropolis and is the highest one (19 m.).

The earlier excavations of the tumulus revealed a monumental Thracian tomb with semi - cylindrical vault and Doric columns in the main chamber , dated to the end of 4th-beginning of 3 rd century BC, a ritual pit and a horse sacrifice.

The square wooden box with golden objects was found in the profile of the embankment, at a depth of 8 m below the surface of the tumulus.

The golden objects belong to three groups. The first one includes female jewelry - a golden spiral diadem with sculptured figurines of lions, panthers, rosettes and fantastic creatures, 4 spiral bracelets with lions heads and a golden ring with Eros in high relief. The second group consists of the appliques of a bridle set - a headstall with a sculptured horse’s protome, cheek pieces - 2 disks with relief head of Athena in a helmet , other appliqués with female faces or floral ornaments, and more than 120 golden buttons. A half of a ritually broken iron bridle was also found in the box.

Three types of appliques, some Inlaid with blue and white enamel, hundreds of miniature cylindrical and round beads, and golden threads suggest that a brocaded cloth was also laid in the box.

The wooden box with the golden gifts can be dated to the end of 4th - the beginning of the 3rd c BC - the period of the political and cultural apogee of the state. Of the Northern Thracians – the Getae.

Most probably the tumulus and its central burial could be connected with Kotela - the Getic king from the last centuries of the 4th century BC, who played an important role in the political and military events on the Balkans, also as an ally of Philip II in their common struggle against the Scythian king Ateas.Meda, the daughter of Kotels became one of the Philip’ wives in 339 BC.


トラキア時代の衣装に扮装して人々とブルガリア民族音楽演奏家たち第一回インターナショナル考古学サマースクールの学生たち（2012年8月）